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乳がん医療の現状と当院での診療

乳がんは今も増え続けている

  • 乳腺内分泌外科医師 紺谷 桂一乳腺内分泌外科医師
    紺谷 桂一

日本人の生活習慣の欧米化と体格発育向上に伴って乳がんは増加しています。最近の人口動態統計によると年間に74,000人が乳がんに罹り、13,000人が乳がんで死亡しています。この数字は12人に1人が乳がんに罹患することになります。我が国では2005年にこれまで触診に頼っていた乳がん検診にマンモグラフィ(乳房X線検査)が追加されました。それ以来触知できない微小乳がんの発見が増加し早期診断・早期治療が可能になりました。しかしながら乳がん検診受診率は、欧米諸国の50~70%と比較すると日本ではいまだ24%とかなり低く、早期発見・早期治療が乳がん死亡を低下させるにはいたっておりません。香川県においては2013年の年間乳がん患者数は614名であり、2001年と比較すると1.8倍に増加しました(図1)。特に2005年の検診マンモグラフィ導入以降明らかに患者数が増加しています。マンモグラフィ導入による効果は乳がん発見状況にも変化をもたらしています。すなわち2001年の乳癌患者さんでは約80%が自己発見であり検診発見はわずか2割でしたが、マンモグラフィ導入以降は自己発見が半分以下に減少しました。そのかわり検診発見が4割を占めるようになりました(図2)。すなわちマンモグラフィによって触知しない早期の段階でがんが発見できるようになったということです。実際に乳がんのしこりを2センチ以下で発見された患者さんの割合は、2001年が51%でしたが2012年には65%に増加しています。乳がん検診受診率が向上するとさらに早期がん発見率が増加するものと思われます。

図1. 香川県における乳癌患者数
図1. 香川県における乳癌患者数

図2. 乳がん発見状況の推移
図2. 乳がん発見状況の推移

診断までの流れ

当院では乳がん検診、ドック検診を積極的に行っています。まずマンモグラフィと触診によって異常がないかを調べます。マンモグラフィ読影は日本乳がん検診精度管理中央機構から認定を受けたマンモグラフィ読影認定医が行います。何らかの異常が認められた場合には、超音波検査による精査を行います。しこりがあれば吸引穿刺細胞診あるいは針生検による病理検査を必要となります。4ミリのしこりであれば的確に診断を行うことができます。良性疾患であれば急激に大きくならない限りは経過観察を行います。もし乳がんと診断された場合には手術などの治療が必要となります(図3)。

図3. 診断の流れ
図3. 診断の流れ

乳がんの治療

  • 手術療法
    原発性早期乳癌に対しては原則的に手術療法が初期治療として行われます。手術は乳房温存手術と乳房切除術が中心となり、腫瘍の大きさや拡がりなどの条件によって手術適応が判断されます。腫瘤が3センチ以下で病変の拡がりが軽度の場合には乳房温存手術(乳房をすべて切除せず腫瘍周囲を大きめに切除する方法)が選択されます。腫瘍の大きさが3センチ以上であるか病巣の拡がりが高度の場合には乳房切除術が適当と思われます。いずれの手術法も腋下のリンパ節廓清(リンパの掃除)を併せ行います。比較的早期癌では、センチネル(見張り番)リンパ節のみを切除しリンパ節廓清を省略することがあります。さらに腫瘍の大きさや拡がり等の理由から乳房切除が適切と判断された症例にも、乳房皮膚と乳輪を温存し内側の乳腺のみをくりぬく“乳腺全摘出術”も行っています。術後くりぬいた部分にシリコンを埋入することによって乳房のふくらみを再現することができます。
  • 内分泌療法
    乳癌は女性ホルモンの影響を受けることが多く、体内の女性ホルモン量を低下させると癌細胞の増殖が抑制されます。したがって、術後再発予防として抗女性ホルモン剤投与を行うことがあります。通常術後2~5年間行います。副作用は少なく、顔面のほてりなどの更年期症状が中心です。
  • 化学療法
    いわゆる抗癌剤療法です。抗癌剤には内服から注射薬まで多くの種類があり、その効果や副作用は様々です。癌の種類や進行度により使用抗癌剤が選択されます。通常注射剤治療で3~6ヶ月間、内服薬治療で1〜2年間行われます。
  • 放射線療法
    乳房温存手術に併用して行われます。通院治療可能で通常5週間行われます。
  • 分子標的治療
    正常細胞になく癌細胞のみが持つ標的分子を特異的に攻撃する新しい治療法です。乳癌ではハーセプチンと呼ばれる抗体を週に1度点滴で投与する方法が行われます。この治療は、現在のところ術後の再発予防治療ではなく、再発転移癌に対する治療として行われています。
    補助療法として化学療法、内分泌療法や放射線療法を個々の症例に応じて行っています。乳がんの進行度によって生存率は違いますが、10年生存率は75%と他の臓器がんと比較するとかなり良好と言えます。いずれにしても早期診断・早期治療が重要です。

甲状腺疾患と日本人

日本人は甲状腺の病気が多い

甲状腺は頚の中央にある臓器で甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンは元気ホルモンとも言われ、精神・肉体を元気にする役割を持っています。このホルモンのバランスが崩れると様々な症状がおこります。すなわち甲状腺ホルモンが多すぎると多汗・動悸・下痢・いらいらなど代謝や活動が亢進しますし、ホルモンが低下すると倦怠感・食欲低下・眠気・うつ状態といった代謝、活動低下がおこります。このホルモンは食物のヨードを原料として作られるため、世界で最もヨードを摂取する日本人は甲状腺疾患が多いと言われています。ヨードは昆布、ひじき、わかめなど海藻類に多量に含まれています。また魚にも多く含まれるものがあります。日本人は海藻類を好んで食べるためヨード過剰摂取による甲状腺疾患が多いわけです。

甲状腺疾患の種類

甲状腺疾患には大きく分けて甲状腺機能障害と甲状腺腫瘍があります。甲状腺機能障害は上に挙げました甲状腺ホルモンの異常による病気、甲状腺腫瘍は甲状腺にできるしこりのことを指し良性と悪性腫瘍があります。

  • 甲状腺機能亢進症
    甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気で、ほとんどはバセドウ病のことをいいます。この疾患は自己免疫疾患と言われ、自己の甲状腺を刺激する自己抗体というものが体内で産生されることが原因です。刺激を受けた甲状腺はどんどん大きくなるとともに、甲状腺ホルモンを過剰に作ります。その結果循環器系では頻脈や高血圧、消化器系では食欲過多と下痢、体重減少、精神的にはそう状態などの症状が出現します。その他振戦(手の震え)や眼球突出(眼の突出)、多汗も見られます。治療法は薬物療法、手術療法、放射線療法があります。
  • 甲状腺機能低下症
    甲状腺ホルモンが低下し不足する病気です。多くは橋本病が原因です。原因として甲状腺に対する自己抗体が産生され、この抗体が甲状腺細胞を破壊するためにおこる疾患です。甲状腺が破壊されホルモン産生が低下するとホルモン不足を補うために甲状腺が大きくなります。症状はバセドウ病と反対の症状が出ます。すなわち徐脈、低血圧、食欲低下、便秘、うつ状態などです。橋本病患者さんの大部分は軽症であるため治療の必要はありませんが、重症になってくると甲状腺ホルモンの服用が必要になります。また橋本病から悪性リンパ腫が発生することがありますので、治療が必要な患者さんは定期的な観察が必要です。
  • 甲状腺癌
  • 甲状腺癌による頚部腫瘤甲状腺癌による頚部腫瘤
  • 甲状腺癌による頚部腫瘤甲状腺癌による頚部腫瘤

50~60歳台の多くは女性に発生しますが20歳台の若年発症もしばしば見られます。甲状腺がんは乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんと4種類に分けられますが、ヨード摂取の多い日本人では乳頭がんが悪性腫瘍の85%と大部分を占めます。甲状腺がんは他臓器の癌と比較して進行が遅く、10年生存率は90%以上と悪性度の低いがんと言えます。主な症状は頚部のしこりと声がれですが、超音波検査やCT検査で偶然に発見されることも稀ではありません。治療は手術による切除が一般的です。

  • 良性甲状腺腫瘍
    甲状腺に発生する良性腫瘍は水の貯まった嚢胞と細胞の詰まった充実性腫瘍があります。大部分は治療を必要としない疾患なのですが、中には徐々に大きくなり周囲を圧迫する腫瘍もあります。そのような場合には手術の対象になります。

早期発見と早期治療が大切

いずれの疾患の場合も早期に診断し、治療が必要な疾患に対しては早期治療が大切です。甲状腺機能障害の診断には血液検査が重要ですし、甲状腺腫瘍の場合は超音波検査やCT検査などの画像検査が有用です。当院では毎週土曜日に乳腺内分泌外来を行っています。何か気になることがある場合には気軽にご相談下さい。

外来診察

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