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慢性腎臓病(CKD)
- まず腎臓の働きですが、以下のようなものがあります。
- 老廃物の排泄:尿素窒素、クレアチニン、尿酸、毒素など。
- 体液の恒常性の維持:水、Na、K、Cl、Ca、Pi、Mg、水素イオンなど。
- 内分泌臓器:レニンとエリスロポエチンの産生・調節、ビタミンD活性化など。
- 代謝臓器:、アミノ酸の産生など。
腎臓では多量の濾過(100ml/分、150L/日)と多量の再吸収(99%)が行われ、1日1L~2Lの尿が生産されるわけです。
- そして慢性(Chronic)腎臓(Kidney)病(Disease)ですが、通常この頭文字をとってCKDといわれます。
1995年に米国腎臓財団が腎臓病領域の「根拠に基づいた医療」として初めてのガイドラインDOQIを作成しました。これは透析患者さんの予後改善を目的としました。そして2002年透析患者さんだけでなく、早期の腎障害も含むガイドラインK/DOQIとなりましたが、この時初めて慢性腎臓病の定義と診断、病期分類が提唱されました。そして2004年、国際組織としてKDIGOが設立され、K/DOQIを踏襲する形で慢性腎臓病の定義・分類が作成されました。
- では何故慢性腎臓病が問題でしょうか?
それは(1)人数が多いこと。日本では成人人口の12.9%(1330万人)。(2)将来的に透析療法が必要となる可能性があること。(3)心血管疾患(心血管病の発症、心筋梗塞、心不全、脳血管障害)による入院、および心血管病による死亡や全体的な死亡のリスクが高いこと、以上の三点です。そしてCKD発症あるいは腎障害進行のリスクファクターは以下のようなものがあります。
- 高血圧
- 耐糖能異常、糖尿病
- 肥満、脂質異常症、メタボリックシンドローム
- 膠原病、全身性感染症
- 尿路結石、尿路感染症、前立腺肥大
- 慢性腎臓病の家族歴・低体重出産
- 過去の健診での尿所見の異常や腎機能異常、腎の形態異常の指摘
- 常用薬(特にNSAIDS)、サプリメントなどの服用歴
- 急性腎不全の既往
- 喫煙
- 高齢
- 片腎、萎縮した小さい腎臓
- 次に、慢性腎臓病の定義ですが、
次の(1)、(2)のいずれか、または両方が3カ月以上持続するときです。
- 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。特に尿蛋白の存在が重要。
- GFR<60mL/分/1.73m2
- そして慢性腎臓病のステージ分類です。
透析患者(血液透析、腹膜透析)さんの場合にはD、移植患者さんの場合にはTをつけます。
病期 ステージ |
重症度の説明 | 進行度による分類 GFR(mL/分/1.73m2) |
ハイリスク群 | ≧90(CKDのリスクファクターを 有する状態で) |
|
1 | 腎障害は存在するが、GFRは正常または亢進 | ≧90 |
2 | 腎障害が存在し、GFR軽度低下 | 60~89 |
3 | GFR中等度低下 | 30~59 |
4 | GFR高度低下 | 15~29 |
5 | 腎不全 | <15 |
- 最後に慢性腎臓病の治療はどういうものがあるでしょうか。
腎臓の模型
- 慢性腎臓病の原因・原疾患の治療
- 生活習慣の改善:肥満の解消、禁煙
- 食事指導:食塩制限、蛋白質摂取量の制限
- 高血圧治療
- 尿蛋白・尿中微量アルブミンの減少
- 脂質異常症の治療
- 糖尿病・耐糖能異常の治療
- 貧血に対する治療
- 尿毒症毒素に対する治療
以上が一般的な治療法ですが、すべての人にすべての治療が必要なわけではありません。問題点をみつけ、個人に合わせた治療を受ける必要があります。
腎臓病センター長 鬼無 信