香川県高松市鬼無町にある医療法人財団博仁会キナシ大林病院のホームページです。

手外科診療センターで
扱う主な疾患

手外科診療センターで扱う主な疾患

 「手の症状で困っている方が安心してたどり着ける場所を目指して」開設した当センターでは、手や上肢の症状にお困りの方のお役に立てるよう、様々な疾患に対応しています。
 手術を行うだけでなく、その後のリハビリテーションについても患者さんに寄り添い、最良の手外科診療を提供できるよう努めています。


①屈筋腱腱鞘炎(ばね指)

 指を曲げる屈筋腱が通るトンネル(腱鞘)に炎症が生じて狭くなり、その前後で腱が肥厚することで指の屈伸時に引っ掛かりが生じます。症状が進行すると指の屈曲や伸展ができなくなります。
 塗り薬や飲み薬による治療から開始し、症状が改善しなければステロイド剤の注射を行います。それでも良くならない場合には局所麻酔下に手術を行い、狭くなった腱鞘を切開します。糖尿病をお持ちの方や症状が強い場合には注射を省略して手術を行う場合もあります。
 手術のあとはリハビリテーションが大切です。手術の翌日もしくは翌々日からリハビリテーションを開始し、障害された指の機能改善を目指します。
 また、当院の特性上、透析患者さんの手術も多数行っています。止血帯が使えないシャント側の手術にも対応しています。

ばね指の発生原因 ばね指の手術

②ドケルバン病

 親指を伸ばす腱(短母指伸筋腱)が通る手首のトンネル(腱鞘)に炎症と肥厚が生じ、手の使用時に手首の親指側に痛みが生じます。屈筋腱腱鞘炎(ばね指)と同様に薬による治療から開始し、症状の改善がなければステロイド剤の注射を行います。それでも良くならなければ腱鞘を切開する手術を行います。当院では腱鞘の肥厚箇所と形態をエコーで確認し、適切な箇所での切開を行っています。

ドケルバン病の生じる部位 エコーを用いた腱鞘の肥厚箇所の確認と切開箇所

③手根管症候群

 手首にあるトンネル(手根管)の中で正中神経が圧迫され、親指から薬指のしびれや疼痛が生じる疾患です。進行すると運動機能も障害され、物をつまむ動作、箸の使用、書字、ボタンかけなどが難しくなります。
 治療は神経の機能を回復させるビタミン剤の処方などを行いますが、症状が強い場合や運動機能が障害され始めている場合には早期に手術を行います。手術では手根管の屋根を形成している横手根靱帯を切開する手根管開放術を行います。手術は局所麻酔下の日帰りまたは1泊入院の手術を行いますが、当院では内視鏡を用いて横手根靱帯を切開する鏡視下手根管開放術に力を入れています。創がとても小さく、体内で自然に吸収される糸で皮下の組織のみを縫合するため抜糸の必要もなく、約1週間で水仕事ができるようになります。傷あとがほとんど目立たないのも長所です。ただし、病状が進行している場合には創を大きく開けて横手根靱帯を切開する従来の手術が必要になります。
 また、本疾患は血液透析を受けられている患者さんにも多く発生するため、透析患者さんの手術も多数行っています。腱鞘炎と同様に、シャント側の手術も行っていますが、シャント側では出血のコントロールが難しいことから、内視鏡を用いた手術は行っていませんのでご了承下さい。

手根管症候群の原因 内視鏡を用いた手根管解放術

④肘部管症候群

 肘の内側にある尺骨神経が通るトンネル(肘部管)が何らかの原因で狭くなり、尺骨神経が障害されます。これにより薬指や小指のしびれが生じ、症状が進行すると物をつまむ動作、箸の使用、書字、ボタンかけなどが難しくなります。
 手術は全身麻酔下、もしくは伝達麻酔(上肢のみの麻酔)下に肘部管を開放し、再発予防のために、尺骨神経を肘の後方から前方に移動する手術を行います。本疾患に関しても内視鏡を用いて行う鏡視下手術に力を入れています。従来の手術よりも創が小さく、吸収糸で皮膚の下の組織のみ縫合するため、抜糸の必要もありません。

内視鏡下の神経剥離 術後の傷跡

⑤橈骨遠位端骨折

 転倒して手をついたときなどに生じる骨折で、軽微な衝撃で生じた場合には骨粗鬆症が影響している可能性があります。骨折部の変形が強い場合には手術が必要になります。
 手術は本骨折の治療用に開発された専用のプレートを用いて骨接合を行います。関節内に骨折が及ぶ場合には、関節鏡を用いて関節の形を正確に整えた後にプレート固定を行います。
 術後のリハビリテーションも大切です。綿密に定められたプロトコールに基づいて手術の翌日または翌々日からリハビリテーションを開始し、早期の機能回復と社会復帰を目指します。手の機能に重要な握力の回復は特に重視しており、専用の訓練器具などを用いて術後早期から訓練を行います。
 また、橈骨遠位端骨折は、骨粗鬆症を有する患者さんが最初に受傷する骨折としても知られています。本骨折を受傷した場合には、近い将来に腰椎や大腿骨の骨折を受傷するリスクが高くなっています。そのため、当院では本骨折を受傷された患者さんのほぼ全例にDXA法(5~10分でできる簡単な検査です)による骨密度検査を行い、骨粗鬆症が見つかれば適切な治療を開始します。

プレート法を用いた骨接合術 関節鏡を用いた関節面の整復

⑥へバーデン結節・ブシャール結節

 へバーデン結節は指の第1関節(DIP関節)に、ブシャール結節は第2関節(PIP関節)に生じる変形性関節症です。どちらも女性に生じることが多く、女性ホルモンの減少が関係していることが知られています。そのため、更年期以降の女性に多く発生します。
 初期には消炎鎮痛剤の外用薬や内服薬を用いた治療などを行います。女性ホルモンの減少を補うサプリメントの摂取も提案しています。病状が進行し、頑固な疼痛や関節の不安定性、指の屈曲制限などで日常生活に支障が生じた場合には手術を行います。
 手術は、へバーデン結節に対しては関節を固定する手術を、ブシャール結節に対しては人工関節に置換する手術を主に行います。

へバーデン結節に対する関節固定術 ブシャール結節に対する人工関節置換術

⑦神経損傷

  • 栗林公園写真▲顕微鏡視下手術(前任地)

  •  神経が損傷された場合、手術用顕微鏡を用いて神経を縫合する必要があります。
     当院には手術用顕微鏡が備わっており、顕微鏡視下に極細の縫合糸を用いて縫合します。神経損傷が広範囲で、直接縫合することが困難な場合には、人工神経(神経再生誘導チューブ)を用いて神経の断端を橋渡しする手術を行います。

⑧伸筋腱・屈筋腱損傷

 手指の伸筋腱や屈筋腱が切れた場合、手術で腱を縫合しますが、縫合後すぐに指を動かすと縫合部が緩んだり、腱の再断裂が生じたりします。一方で、手術後に指を動かせないように固定すると、再断裂のリスクは低くなりますが、腱も動かなくなるので周囲組織との間に癒着が生じます。癒着が生じると、せっかく縫合した腱が修復されても十分に指が動かなくなります。
 そのため、当センターでは腱を縫合した後に再断裂が生じないような負荷で指を動かせる特別な訓練用装具を作成し、療法士の指導の下で早期から指の屈伸訓練を行うことで腱の癒着を予防しています。

伸筋腱損傷の術後に行う、装具を用いた指の屈伸訓練訓

⑨関節拘縮の治療

 指の骨折などの後に、指の屈伸が高度に制限される関節拘縮という状況に陥ることがあります。関節拘縮は関節を包んでいる袋(関節包)が肥厚して伸縮性を失うことや、関節を動かす伸筋腱や屈筋腱の癒着などが原因となって生じます。
 手術では肥厚した関節包を切除したり、癒着した腱を周囲の組織から剥離したりすることで指の動きを良くします。手術後のリハビリテーションがとても大切で、指の屈伸を補助する特別な訓練用装具を用いて手術の翌日からリハビリテーションを行います。

⑩母指CM関節変形性関節症

 親指の付け根の関節(CM関節)が緩んで軟骨がすり減ることで変形性関節症という状態に陥り、ビンの蓋開け動作などが痛くてできなくなります。
 治療は消炎鎮痛剤などの処方から開始しますが、薬の効果がなく症状が長期化した場合には、慢性的な疼痛に効果があるとされる薬に切り替えます。それでも症状が改善しなければ手術を行います。
 手術の方法は、主に関節固定術、中手骨骨切り術、関節形成術の3つがあります。
 関節固定術は傷んだ関節を固定してしまう手術です。疼痛の改善効果は優れますが、関節が動かなくなります。中手骨骨切り術は親指の付け根の骨(中手骨)の一部を切除し、理想的な形に整えて骨の再接合を行う方法です。関節の変形が中等度までであれば、この方法を行うことで疼痛が改善し、傷んだ関節軟骨の再生も期待されます。
 変形が高度になった場合には関節形成術を行います。CM関節を構成する骨(大菱形骨)の一部を切除し、親指とひとさし指の付け根の骨(中手骨)を移植腱で連結します。この方法では、関節の動きを残した状態で疼痛を改善させることが可能です。最近では強靭な縫合糸で連結部を補強することで、早期からの手の使用が可能になっています。
 当センターでは主に中手骨骨切り術と関節形成術に力を入れています。

中等度の関節変形に対する中手骨骨切り術 中等度の関節変形に対する中手骨骨切り術

⑪デュピュイトラン拘縮

 手のひらの皮膚の下にある手掌腱膜という薄い膜が肥厚して短縮し、指の伸展が障害される疾患です。指の伸展障害が悪化し日常生活に支障をきたすようになれば、手術で肥厚した腱膜を切除します。
 肥厚した腱膜は神経や血管を巻き込んでいることも多く、手術用顕微鏡を用いた切除が必要になることもあります。伸展障害が高度になると皮膚の短縮も生じるため、局所皮弁という特殊な方法で皮膚を延長する必要も生じます。
 また、術後のリハビリテーションも非常に重要です。当センターでは指を持続的に伸展させる装具などを用いて、より良い指機能の再獲得を目指しています。

デュピュイトラン拘縮

⑫三角繊維軟骨複合体(TFCC)損傷

 手関節の小指側にあるTFCCという組織が障害され、ドアノブを回すなど、手関節のひねり動作で痛みが生じる疾患です。手をついて転倒した際や、ラケットスポーツなどのスポーツ活動などで発生します。治療は専用のサポーターや消炎鎮痛剤による治療などを行いますが、症状が改善しない場合には手術が必要になります。
 手術では傷んだTFCCを修復したり、TFCCへの負荷を減らすためにTFCCが付着する尺骨の短縮を行ったりします。

三角繊維軟骨複合体(TFCC) 尺骨短縮骨切り術

⑬麻痺手の再建

 手は主に正中神経、尺骨神経、橈骨神経によって機能しています。これらのいずれの神経が障害されても手の機能障害が生じます。
 よく知られているものとしては、重症手根管症候群で見られる正中神経麻痺、重症肘部管症候群で見られる尺骨神経麻痺などがありますが、種々の外傷によっても神経の麻痺は発生します。
 これら神経麻痺においては、損傷を免れた神経が支配する筋腱を麻痺した筋腱に移行することで、機能の回復が期待できます。少し複雑な治療になりますが、神経麻痺でお困りの場合は一度ご相談下さい。

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キナシ大林病院 手外科診療センター(整形外科内)

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